『ハンチバック』、私も積田読さんがおっしゃっているようなポイントが一番印象深いと思っています。(障害者のセクシュアリティといった話題がセンセーショナルに取り上げられがちだが、障害を持つ人のアクセシビリティや、紙の本がもつ権威性を指摘していることが、この本の注目すべきところではないか……という話)
ただ、自分は、この話題について、読み終わってからずっと、複雑な気持ちになり、ぐるぐる考え続けています。
というのも、こうした〈紙の本批判〉をしている作品が、結局、「文學界」という紙しかいまのところないメディアに掲載され、ある種の権威の象徴である芥川賞候補になっているという現象自体が、露悪的というか、出版社側のマゾヒスティックな行動のように感じてしまったからです。
穿ち過ぎなのは自覚していますが、それがちょっと気持ち悪くて、整理がつかなかったのですが、しばらくして、「文學界」編集部が、文藝春秋の経営者や、その他出版業界の「えらいひと」に向けて一石を投じているのだと考えるようになりました。
芥川賞とは関係なく、全人類に読んでほしい、というのは私も強く思っています。