市川崑『破戒』を観る。雷蔵の色気たるや!彼の流し目は岸田今日子の妖艶さえ眩むほどだ。
粗筋は部落の出生をひた隠しに生きる善き青年の苦悩と幸せと…。今年はやたら部落にかんする物を見聞きする年だったが本作はフィクションなので救いも大きく、これが市川崑らしさか知らないが“善人が日の目を見る”始末の良さはわざとらしいまである。脇を固める役もすべてが都合でしかなく全体的に人間の生っぽさがない。そういう予定調和が愛された時代なのだろうが…それにしても悪が悪でしかない一本調子は観ていて現実味に欠けていやだねえ。バイキンマンにだってもう少し機微があるんだから、とつい的外れな文句を垂れてしまう。
舞台が冬の山奥の村ということで雪の演出が印象的で、寒そうで良かった。観終わった後に冬気分で仕込むおでんが一層美味そうだ。