『ウスタード・ホテル』(マラヤーラム語、2012年)観ました。料理人青年の成長もの、と見せかけ、これはゴリッゴリのスーフィズム映画ですね……!!! チシュティー廟出てきたし……。
美しい画面に官能的な料理描写、脳髄に響くガザル、人間の善性に対する確かな信頼。感情をせわしく揺さぶるというより、二時間半じわ……じわ……と南アジアの信仰と食が食堂の建つ浜辺のように打ち寄せる。すばらしかった。

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放浪癖のある料理人の父(主人公にとっては祖父)に反発し、ドバイで実業家として成功した男の息子ファイジは、金持ちの父に嘘をついてスイスでシェフになる教育を受けるが、実家の圧力で見合いをするためケーララに行き、そこで父に「料理人になるなら勘当」と言われて祖父のもとに身を寄せるが……という冒頭。南インドのムスリム社会が主な舞台なんだけど、終盤で重要な役回りの男性はヒンドゥーだし、ブルカと髪丸出しのロッカーが並立するのが南アジア〜って感じ。
最初のほうはいかにも南インド映画な、主人公の極端な境遇(超金持ちの息子、姉が何人もいるなかやっと誕生した末息子)に「またこれか……?」と思ってたんだけど、細部がすべて誠実に作られているので、ここちよさに浸っているうちに2時間半あっという間だった……

ネット上の感想で「主人公に甘いように道具立てされてて葛藤がうまく処理されていない」というものがあり、まあごもっともなんだが(セリフなしのフラッシュバックみたいなシーンでもろもろの苦労や葛藤をいい感じの音楽と映像でさらっと流している)、信仰についての映画という視点があれば個人的にはけっこう納得いくものなんだよな、南アジアの神秘主義とかバクティーとかに聞きかじりがないと厳しいかもだが

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