目が覚めると深海を泳いでいた 馴染みのある冷たい水 先の見えない真っ暗な中をたくさんの生き物が泳ぎ、食いあっている気配 懐かしい、と思っていると、向こうの方から大きな気配が現れた 自分にそっくりな形のそれは、ちょうちんを揺らし、海流をくぐりぬけて目の前までやってきた 「フォルネウス、探したよ」ソロモンの声だった 楽しげにそれはひるがえり、フォルネウスの身体に添わせるようにして自身の身体をよじった 「前からこうしたかったんだ さあ、連れてってくれ フォルネウス」 触れ合った尾びれがくすぐったくて笑う 強請られるままにフォルネウスは泳ぎ出した 下へ 暗がりへ 水の冷たさでだんだんと体の感覚が麻痺してくる 横にぴったりくっついたソロモンが、親友、と自分を呼んで、ああ、呼びかけを返そうとして、それで
目が覚める
そこはアジトの自室で、体を起こすとちょうど、大広間の鐘が四度鳴った 見張りの歩き回る音がさざなみのように廊下にひびいている 今夜は凍えるほど寒かった 息を吐くと白くけむり、ここが海ではないのだと思い知る
最悪の夢だった 同じ姿、同じ闇、失った果ての情景 きみにそれを、望んでほしいだなんて