そんで最後の会話さあ!
「(俺がオマエとここにいる今日のこの光景は、ただの偶然やなにかの間違いじゃねぇのさ)そうだと、いいが……どうせ「終わる」前にはオマエもいなくなっちまうんだろ?だから今のうちに言っておくぜ、「ソロモン王」。バカ野郎」
これってその直前でしてた、戦争は各々の個を貫くために戦った結果なのに、ふと誰もが自分の元を去ることを実感し、泣きたくなる、という話なんだよなあ。ソロモンもいつかバラムを置いていく。それってバラムにとって、いつか見る歴史の終わり、ハッピーエンドに、ソロモンは絶対いないってことで、バラムは今、いつか来る未来でソロモンに言えない分のなじりを言ってるんだよな。バカ野郎、置いていくなって。ソロモンもそれがわかるからここで黙っている。死ぬ者は置いていく者に許しを乞うことはできない。
ここでバラムがソロモンのことを「ソロモン王」ってちゃんと呼ぶの、7章でみんなが気にしてる「グロル村の少年がソロモン王に成り果ててしまうことの恐ろしさ」だなあと思った。ソロモンは王様という碑石になろうとしてて、みんなはそれをやめてほしい。だけどかける言葉を持たない。そんな中でバラムは、いやお前がいくら死者のための碑石になったってお前もいつか俺を置いていく側になるだろ、お前はお前の目指す完璧なソロモン王にはなれないだろ、目を覚ませって呼び掛けている。ここでバラムが「お前も俺を置いていくだろ」って気づかせることで、ソロモンが、碑石じゃない自分、今を生きてる自分を回復できたらいいな。だって逆の立場だったとして、ソロモンがバラムに「俺が死んだら俺のための碑になってくれ」なんて望むわけないんだもんな。バラムに望めないことを自分はやろうとしてる、そのおかしさに、あなたがどうか気づいて、自分を許せますように。 [参照]