同名の原作『八犬伝』は、『南総里見八犬伝』のストーリーと作者・滝沢馬琴の実生活を交互に書き進めて、馬琴の創作過程を追った山田風太郎の力編。
読みどころのひとつに、江戸文化の爛熟期を代表する巨人たち、滝沢馬琴、葛飾北斎、鶴屋南北が、中村座の舞台裏(奈落)で創作論を交わすくだりがある。映画にしにくい場面だからどうなるかと見ていたら、三者の会話がかなり忠実に再現されていて、納得。原作とは出入りの大きい脚色だが、この場面はやはり大事にしたかったのだろう。
映画では言及がなかったが、馬琴と北斎を南北のいる舞台裏に案内した人物は、原作では鼠小僧次郎吉。まったくの脇の人物なので、三巨人の会話とは逆に、フィルムを費やしたくなかったのだろう。