佐藤信の戯曲『ブランキ殺し上海の春』には3種の版があるという。
そのうち第2稿「ブランキ版」の初演は1976年(昭和51年)、最終稿「上海版」の初演は1979年(昭和54年)。
両版は『喜劇昭和の世界 3』に収められている。
両稿における音楽の使われ方。
第2稿「ブランキ版」のベースは社交ダンスのためのピアノ音楽。おおむねワルツ。時にタンゴ。
対して激しさを担うロックンロール。この音楽はある人物のヘッドフォンから突然に大音量で漏れだす。また、ヘッドフォンを付けた虎が空を駆ける場面でも流れる。ロックンロールが流れ出す場面には、いつも老人(じつはブランキ)が居合わせる。
最終稿「上海版」はタンゴにはじまり、タンゴで終わる。とくに「ラ・クンパルシータ」。
途中では、革命歌の「ラ・マルセイエーズ」、「インターナショナル」、初期のスイングジャズ、テンポの遅いブルース、メリーゴーランドの伴奏を思わせる素朴な旋律のレコードなど。全体に古めかしく。
両稿に通じる懐旧感。やりそこなった感も併せ持つ。
用語「ロック」と「ロックンロール」の違い。両者の指すものを懐旧感の有無あるいは強弱で分けることができないか。
チャック・ベリー、プレスリーの懐旧感。
昔の歌だから懐かしいのではなく、彼らの音楽は発売時からすでにノスタルジックだったのではないか。
『ブランキ殺し』第2稿から第3稿への移行は、内なるノスタルジーからあからさまなノスタルジーへの移行? 第3稿が読めてないので、宿題とする。
戯曲『ブランキ殺し上海の春』第2稿のト書きにある「ロックンロール」は、具体的には何だったのか。
上演時に流された曲が何かは知らないが、チャック・ベリーの「ロックンロール・ミュージック(Rock and Roll Music)」かそれに類するものではなかったか。ある時期までロカビリーと呼ばれていたジャンル。
1957年、チャック・ベリーの「ロックンロール・ミュージック」が全米8位のヒット。
1964年、ビートルズがアルバムの1曲としてカバー。
1965年-66年、ザ・ピーナッツ、西郷輝彦、広田三枝子、尾藤イサオらがカバー。
1966年、ビートルズの日本武道館公演で1曲目に演じられる。
1976年6月、ビートルズの2枚組ベスト・アルバム「ロックン・ロール・ミュージック(Rock 'n' Roll Music)」に、2枚目の第1曲として収録。
以上、Wikipedia の「ロック・アンド・ロール・ミュージック」項による。
1976年12月、「ブランキ版」初演。
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