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江戸は隅田川沿いの私娼窟で、店の主人に納まっているのがじつは藤原純友の遺臣、そこで養われている三日月お仙が純友の遺児、そこへお仙をくれと言ってやってくる若い魚屋が頼光四天王の一人・渡辺綱であったり、
あるいはまた、江戸郊外の茶屋の主人が、じつは四天王の一人である卜部季武、その女房がじつは平将門の娘・七綾、そこへやってくるクズ鉄買いの伝七がじつは将門の長男・将軍太郎良門であったり、
江戸の市川團十郎を、じつは頼光四天王の一人・碓井貞光とする設定もあり。團十郎が貞光を演じているのではない、貞光が團十郎を演じているのだ、と。その團十郎に京から下ってきて弟子入りする女形が、じつは源頼光の弟・美女丸であったり。――

永劫回帰の観念が、ほぼ同じ時期にボードレール、ブランキ、ニーチェの世界に現れたことは、力説されるべきである――とベンヤミンは言ったが、彼らがイデアとして述べたことを、江戸の歌舞伎は見世物として客に供した。
ここで挙げたのはすべて、平将門、藤原純友の残党を江戸の現代に回帰させた鶴屋南北の例。先行例を並べて南北にいたる過程をたどることは、江戸芸能史の一面を語ることになるはず。

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