前作「なれのはて」と今回の「ベイウォーク」、撮影期間は2012~19年だそうだが、その間20回ほど、200泊ほどしながら現地取材/撮影を重ねた結果の作品とのこと。映画に採用されなかった取材対象もいただろうが、1作目の4名、2作目の2(+α)名、7~8名のうち6名が撮影中に死んでいる。いずれもまさに〝ドン底〟のその日暮らし。詐欺、殺人その他の犯罪の末に流れ着いた人もいれば、女性を追いかけて来てしまった人もいる。詐欺の被害者もいるし、厭世的な元警官もいた。共通項は「(日本に)帰れない」という点。そんな人々がマニラに相当いるらしい
淡々としたドキュメンタリーで視線はかなりドライだが、そこにはある種の愛情(というか諦観?)も感じられる。「まあそりゃそうでしょうね」と言いたくなる場面も多く、転落人生の記録の割には悲壮感はそれほどでもない(重いのは間違いない)
ただそのなかで、ひとりだけ、定年退職後の優雅な暮らしを夢見て自らやってきたオヤジがキツかった(「ベイウォーク」のほう)。完全孤立のタワマン暮らしで、貧民窟のコミュニティにも混じれずにただただ悶々とした毎日を過ごし、数年のうちみるみる体を蝕まれていき、気付いたときにはマンションで孤独死
貧民窟でもコミュニティのある人には、まだなんらかの救いがあったが