『関心領域』続き
それでも、家の住民たちは、それらが「何」なのかをよく理解している。分かったうえで見えないふりをし続ける。使いかけの口紅は念入りに拭うし、川からあがれば急いで風呂に入って皮膚が痛くなるまで身体をこする。壁のむこうで煙がたてば窓を閉める。そうしながらも、この生活が末永く続くことを願う。
もし、私があの家の主だったなら、気づけるだろうか。いや、気づいたとしてやめられるだろうか。自分の生活を維持するために誰かが死に続けているのだと知って、ちゃんと絶望できるだろうか。下手なホラーよりもすごく怖い映画だった。
とりあえずいまは『<悪の凡庸さ>を問い直す』が読みたいです。
あと、これは好みの問題だけど、私は昔からシンセサイザー系の音がうょんうょん鳴ってる系の演出が得意ではなく、この映画で使われていた音はどっちかというと苦手なやつだったので、序盤からずっと腹の底がむずむずしていた。なんかぞわぞわするねん、いや、そういう映画だけども。
『関心領域』続きの2
唯一、明確に善なる存在として出てくるのが、リンゴをくばるシーンとピアノを弾くシーンなんだけど、リンゴのほうは後に悲劇を引き起こすし、それを見た少年の台詞がまたしんどいし(冷笑仕草だし……)ピアノのほうは家主に無断で弾いて叱られないのか気になっちゃったしで、いいシーンなんだけど微妙に語りにくいっていうのはあったかなあとおもった。これはわたしの読み込みが浅いかもしれない。