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> これはマレー糸状虫だと、とっさに佐々は思った。バンクロフト種は平仮名の「し」の字のように緩やかに湾曲している。それに対してマレー種は細かく何か所も湾曲している。今、目の前にあるミクロフィラリアは明らかにマレー種のものであった。しかし従来の寄生虫学では日本国内に存在するフィラリア症はバンクロフト種のみとされ、これは佐々の留学していたジョンズ・ホプキンズ大学の図書館にあるフィラリア関連の蔵書でも同様であった。日本に存在しないはずのマレー糸状虫が八丈小島に存在するのだろうかと疑問を持ちつつ、昨夜採血した複数の血液標本を次々に検査したが、どれもこれもマレー種ばかりでバンクロフト種はまったく見当たらなかった。八丈小島のバクの正体はマレー種のフィラリアだったのである。

これ​:gekiatu:

研究者が「これ寄生虫じゃなかったら、特別天然記念物だぞ!!」って興奮してるところと、寄生虫だからということで容赦なく駆除されてるところと、そもそもこの島に特異的にこの寄生虫がいた理由は、ずっと昔に東南アジアの方に漂流したり漂流されてきたり人から貰ったのかもしれないってところと、こんなに懸命に調査・殲滅したのに「島が不便すぎる」って理由で島民があっさり全員離島したってところが、とても人間・人類という感じで、めちゃくちゃいい。
Wikipedia文学の最高峰と言われて久しい「八丈小島のマレー状糸虫症」だけど、本当に一読の価値がある。

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