コイカラ11(あむあず)
彼女の足元で、道の真ん中で仰向けに倒れている青年を見つけたのは、梓に声をかけてからのこと。褐色の肌に、顔周りに特徴的なくせ毛がある金髪。目を閉じていてもわかる整った顔立ちは、若干幼く見える。
彼を見て、沖矢がぴくりと反応する。ほんのわずか、注意していても気づくか否かの変化には、すぐ間近にいた梓を含め、誰も気づいていない。
「ええと、彼は?」
こほんと小さく咳払いをしてから、気を取り直して地面に仰向けに寝ている青年に視線を落として、それからもう一度、梓を見る。
「それがですね、ええと」
「お知り合いですか?」
困った顔を見せる梓に尋ねる。沖矢の質問にいいえと首を横に振る。青年は梓がひったくりにあった現場にたまたま出くわして助けてくれた人で、知り合いではない。というか、金髪に褐色の肌の知り合いなんて梓の回りには居ないと言うと、梓の話を聞いた沖矢も、あごに手を当ててふむと考える素振りを見せる。
「しいて言うなら、ひったくりから助けてくれたヒーローさん?」
「なぜ疑問形なんですか」
戸惑いを見せる梓に、沖矢がくすりと笑う。