コイカラ04(あむあず)
表の看板には喫茶店を表すコーヒーカップが描かれていて、玄関にはポアロの文字が書かれた帆が掛けられている。店の輪郭があやふやになるほどたっぷりの花で飾り付けた花壇には毎朝たっぷりと水をやるのが、梓が店員として店に出勤してきて一番にやることだ。真っ昼間の今は、路地の隙間から差し込む太陽の明かりをたっぷりと浴びて、鮮やかで色とりどりの花を元気いっぱい咲かせている。
この国──白の国では、今の季節はあらゆるところで桜が満開に咲き誇っている。淡いピンク色の小さな花びらはときおり強く吹く風に舞い上がって、時には幻想的な光景が見られることもある。
特に広場や、郊外に走る川の河川敷などは様々な種類の桜の木が集中的に植えられていて、まるでピンク色の絨毯が敷き詰められているかのような光景が広がっている。ピンク色を中心にそれぞれ個性的で特徴的な色をしている桜の花は、舞い落ちたピンク色の花びらがグラデーションのように混じり合って地面に美しい模様を描いている。
見上げた先で風に吹かれた花びらが宙をを舞い、踏みしめる石畳には舞い落ちた花びらが絨毯を作り、あたり一面の世界の景色を構築する全てがピンクに染められた。