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キャサリン・レイシー「ピュウ」読了。
心がしんとするような小説が。台詞が「」ではなく太字なのも良かったし、今年読んだ中でベスト級に好き。

性別も国籍も名前も分からない「ピュウ」に対して、素性を突き止めようとする人達。だんだんとピュウを責め始め、表面的な善意が剥がれていく。その中でも裏表なくピュウに接した人達が印象的で、ずっと思い出している。

言葉はあくまで借り物で、それが全てを表現することはない。そう言われると言葉が頼りないようにも思えるけど、それは形あるものに固執しているからこそ感じる不安なんだろう。

もし自分が町民だったら、ピュウにどう接しただろう。ピュウの心の波を揺らがすような言葉や視線を送ってしまうんじゃないだろうか。
ガソリンスタンドのあの女性のように、最初から「ピュウにとって」心地よい距離で関わっていく自信が全くない。それは私がこの世界のあまりに狭いところで生きているから。ピュウはその視線を静かに鋭く捉えるだろう。

自分の薄っぺらさと向き合う機会をくれる大事な小説になった。

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