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『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』加藤陽子 (新潮文庫)

読了。ずいぶん、本当に長い時間をかけて読み切ったのだけど、時間をかけすぎて全然「読めて」いない本です……。期間を空けてもう一度読みたい。
その中でもお渡しでもハッとするような箇所がいくつもある。たとえば満州への開拓移民のところ。

「三二年ぐらいから試験的な移民は始まっていたのですが、初期に移民した人々から、満州が「乳と蜜の流れる」土地であるなどという国家の宣伝はまちがいで、厳寒の生活は日本人に向いていないのだとの実情が村の人々に語られはじめ、移民に応募する人々は三八年ぐらいから減ってしまった。そこで、国や県は、ある村が村ぐるみで満州に移民すれば、これこれの特別助成金、別途助成金を、村の道路整備や産業振興のためにあげますよ、という政策を打ちだします。
このような仕組みによる移民を分村移民というのですが、助成金をもらわなければ経営が苦しい村々が、県の移民行政を担当する拓務主事などの熱心な誘いにのせられて分村移民に応じ、結果的に引揚げの過程で多くの犠牲者を出していることがわかっている。ただ、とても見識のあった指導者もいて、その例として大下条村の佐々木忠綱村長の名前が挙げられます。佐々木村長は、助成金で村人の生命に関わる問題を容易に扱おうとする国や県のやり方を批判し、分村移民に反対しました。このような、先の見通しのきく賢明な人物もいたのです。」(p.466)

この、資金に困っている自治体に金をチラつかせて生命や生活をトレードさせようとするやり方、今はどうしても原発を思い出してしまう。ずっとこうなんだなっていう静かなショックがある。

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