つけ加え。この作品を批判の俎上に載せるのならば、構造の古めかしさとかよりも「自己犠牲の美化」ではと思う。作者が自己犠牲を真実良いものとして扱っていやしないのは、登場人物たちの死ぬ死ぬ詐欺ぶりからも明らかだ。おそらく作っていた側は、「登場人物が死ぬと話が盛り上がるから」そういう展開にしていただけで、主人公たちは何度も「実は死んでなかったんです」と復活してくる。はては、なにせ冥府の神ハーデスがいるので本当に死んでても復活する。とはいえ、「大義のためにみずから命を捨てるのは悲しいことだが劇的で"素晴らしい"こと」という展開がなぜ繰り返されるのかはさすがに一考の余地があろう。