太平記、子供の頃読んだ時はやたらとハラキリ描写ばかり細かくてなんだこのネクロフィリックな話は、と早々に読むのをやめていました。
中年になってから読むと、いろんなところに気を遣っているうちに雑然としてしまい、一貫性も思想も反省もない、しかし妙に面白い怪作ができちゃった感じがなんとも言えない。
後醍醐の京都脱出で輿を担いでいるのが大膳大夫(饗宴を司る役所の担当者)だったり楽人だったり、供奉するのが歌人の為明だったり、内裏の後醍醐ファンクラブかよ!と突っ込みたくなります。これは後日、過去のヨーロッパで、独裁者の身の回りの世話をする理髪師やコックが出世しやすい(要するにいちばん信用されているから)という逸話を聞いてリアリティーが付け加わりました。
「こちら太平記編集部」というのを大河ドラマでやってくれないかしら。コロコロ入れ替わるパトロン、途中で戦死する情報源、我が家の活躍を入れろと圧をかけてくる有力武将、話の長い老官女。オラもうこんなことやっていられないと出て行く編集長。恋愛も合戦も愚僧の筆が作る。書き残せばそれが真実になるのだ!
見たい。