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「在野研究ビギナーズ 勝手にはじめる研究生活」荒木 優太 編著 明石書店 
akashi.co.jp/book/b472224.html

4年前にいったん研究室を離れた直後に買って、手をつけずに寝かせていました。興味を惹かれたものの当時のTwitter理系TLでは「なんかみな辛そう」などつらめの感想が多く、自分含めた研究者の強すぎるエゴとか面倒臭さにぐったり来ていた当時は全く読む気がしなかったのです。

復帰してリハビリに開いてみたら存外明るく面白く、なーんだ、これ役人やりながらチマチマ論文書いてた自分の駆動力と同じものじゃないか、いかにして上司にガタガタ言われない、クソみたいなロードマップやソサエティ5.0やらとの整合性に悩むことのない知的遊戯を持続的に楽しむか、という話だ、と、すんなり飲み込めたのでした。

本書で取り上げられている研究は人文系が多いので、実験室など巨大資本が必要な分野の人には、研究所を離れて研究を続ける研究者など大変胡散臭く思えるかもしれませんが、雇用機会が少ないだけ彼らのスピリットは中々しぶとく賢い。何本論文書いたって大学の椅子はないのにやるのです。結局は成功談ばかりの理系サクセス本とは一線を画す仕上がりです。

 

一点、中にはちょっと生理的に受け付けない(具体的に言うと学生運動に乗じて暴力で同級生の教育機会を奪った武勇伝を得意げに話すタイプの老人)もインタビュー先に混じっているのですが、聖人君子みたいなハードワーカーばかり出てきてワーク・ライフバランスを語りながら、結局は頑張れば何とかなるという空虚な話をするというよくあるキャリア本とは違う禍々しさに寄与しており、こんな末路にはなりたくないという逆ロールモデルをも提示するにはよいサンプルです。

それ以外のもっと若い世代の研究者は、それぞれ一家言あって本当に魅力的です。普通に生活しているだけでは余ってしまう何かをなんとかするために生活をする。もうそれだけでいいじゃないですか。

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