俺は義務アンコールが嫌いで、アンコールを無しにしている。
別にそこまでアンコールしてほしいわけでもないのに、義務、慣習、惰性で行われる長いコールの時間がまったく何がエンタメなのかわからない。それをやるなら、すべてを一度に出し切ってスパッと気持ちよく終わってほしいのだ。
ライブ中に、アンコールはないということを5回以上MCでハッキリと伝えているし、エンディングもキッチリやる。
しかし、興奮、熱狂、絶叫がどう頑張っても冷めやらず、心の底から湧き上がって弾け出す、本物のアンコールをこの二会場で味わった。
絶叫まみれの雑音の塊が、次第にきくお!きくお!となり、あるいはTe amo Te amo(愛してる)となり、ole ole ole Kikuo Kikuoとなり、アンコール!アンコール!となり、会場BGMを流し、終演のアナウンスをしても止まらない。
俺もそんな時は1〜2回再登場して軽く煽るのだが、それでもまったく止まらない。
本物のアンコールだ、と思った。
どうすればよいか、何を選択すれば満足するか。仕込みはなし。目の前にはすべてのデータが入ったPC。
チリでのコールで思慮に耽り、アルゼンチンで答えを出した。
熱狂の渦は「Arigato! Arigato!」のコールに変わり、収まりを見せた。