『エンパイア・オブ・ライト』中年の白人女性と若い黒人男性の恋愛をフラットに描いた珍しい作品。逆は腐る程あるけど。非常に複雑な人生の陰影を持つ(あの状況とはいえ女性の方からキスをするだろうかという疑問も後に明かされる彼女のバックグラウンドを見てある程度納得できた。)主人公を演じるオリヴィア・コールマンは例によって無双。終始年齢差を強調することがない(人種差別や性差別は容赦なく描かれる)作りが良かった
とはいえ色々盛り込みすぎて、全体がぼやけてしまっているきらいもあったけれど、80年代の英国、サッチャーがやらかしまくって、故にスキンズ(レイシスト)が大暴れしていた時代が舞台から2 Tone skaがキーアイテムになっており、大画面大音量で鳴り響くスペシャルズで個人的にオールオッケーに
『別れる決心』最高に俗っぽいアート映画。正しく才人の仕事。物語&ジャンル依存しない(本作ストーリーだけ抽出したらテンプレ的なラブストーリー&サスペンス)映画の楽しさを存分に味わえて、こういう大人の映画見たかった。実相寺昭雄の美意識と鈴木清順のケレンと濱口竜介の会話芸を併せ持ちヒッチコックの『めまい』をリメイクしたような
キスまでの距離の映画という点では『リコリス・ピザ』とまったく同じだけど、そこに至るまでの道のりの変化球(でもボールは最後にミットに収まる安定感)の連続が楽しすぎ。逆にリコリスはまっすぐ進む快楽があって、最初から天才だったPTAと、映画評論家から作家になったパク・チャヌクとの違いかもとか。あと大人はキスした後、しかも既婚者同士となるとその後色々あるわけで、そこも違うけど
しかし直接的な表現は一貫して一切ないのにここまで生々しく毒々しいエロ描写ってできるんだな。の上でも品の良さとユーモアも併せ持っていて、全編通してなんか笑えるのもすごく好き
あと音楽演出もすごく冴えてた。裏切りとミスリードを誘発しまくる劇伴もチョン・フニの「霧」も全部最高。サントラは愛聴盤確定。音響設計もすごかった。中でもごく数秒の完全無音演出とか凄まじかった
『コンパートメント No.6』こういう小さな宝石のような作品に出会いたくて映画館に行ってるようなもの。自分たち庶民にとって人生とは、旅とは、他者と交流することとは、について奇をてらわず丁寧に、でも映画として非常に楽しく作り上げたユホ・クオスマネンの手腕はどこかジョン・カーニーに近いものがある。音楽を重要なキーアイテムにするところも含め。思えば『オリ・マキの人生で最も幸せな日』もそういう作品だった
ラウラとリョーハの旅路は、まるで現実世界で出会った『マッドマックス 怒りのデスロード』のケイパブルとニュークスのよう(とはいえファーストコンタクトのアレは絶対にナシ)。公開館本当に少ないのがとても惜しい。でも多くの大人に見てほしい