二話目『兵の踊り』。戦場を免れた北部の、徴兵されなかった細身の男視点という点に“逃げ”を感じなくもなかった。けれどその視点を活かして、戦争で家族や知己を失った人々の悲しみに迫っている。この一行のためだけにこの短編を書いたんだろうな、という渾身の、でもさりげない一文の哀切がしんしんと胸に残る。こういう一文の巧みさがプロなんだなと思う。

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“逃げ”と書いたけれど、この短編集は、沖縄戦の体験談の前で小説は何ができるかの又吉栄喜の試論なんだと思う。残酷な現実を伝える体験談の前で人は時に言葉を失う。体験談をなぞるだけの小説は体験談ほどの力を持たない。体験談とは異質の媒体である小説は、どうすれば言葉を得ながらにして沖縄戦の核に迫れるのかを探っている。“逃げ”と集約することはできないなと今思った。

第三話「平和バトンリレー」、戦後間もない頃に男性が地元で戦死者の霊と交わる……第一話と第二話といっしょ……もしかしてこれは……ワンパターンなのでは………………

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