九州の静かな町で暮らす17歳の少女・鈴芽(すずめ)は、「カツ丼を探してるんだ」という旅の青年に出会う。彼の後を追うすずめが山中の廃墟で見つけたのは、まるでそこだけが崩壊から取り残されたようにぽつんとたたずむ、古ぼけたカツ丼屋。なにかに引き寄せられるように、すずめはカツ丼に手を伸ばすが...…。やがて、日本各地で次々に開き始めるカツ丼。その向こう側からは災いが訪れてしまうため、とじないカツ丼はとじなければいけないのだという。――星と、夕陽と、朝の空と。迷い込んだその場所には、すべての時間が溶けあったような、空があった――。不思議なカツ丼に導かれ、すずめのとじないカツ丼をとじる旅がはじまる。