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昨日ダウンロードで買った音源の1つがこれ。

Schubert & Burgmüller: Works for Arpeggione Classical Chamber CPO
chandos.net/products/catalogue

“save 30% Offer ends 12.00 GMT Friday 6th January 2023“ に急かされポチってしまったことは否定しないw。

シューベルトの「アルペジョーネ・ソナタ」をアルペジョーネで弾いているのがこの音源の一番のチェックポイント。個人的には以前クリストフ・コワンの演奏で復元されたアルペジョーネでの演奏を聴いたことがあるので、アルペジョーネの音を聴くのはこれが初めてではないのだけれど。

でも、正直なところアルペジョーネはとても悩ましい存在だと思う。率直に言ってアルペジョーネは「開発に失敗した楽器」と言って良く、それにも拘らずシューベルトのアルペジョーネ・ソナタの出来が良く、今でもチェリストの重要なレパートリーになっているくらいなので、この曲をどうやって当初シューベルトが想定したであろう響きで再現させるかを考える上では、どうしても一度はこの楽器は実際はどの様になる筈だったのかを探らないと先に行かない。

で、実際に復元された楽器を聴いた感想は「あまり出来の良くないチェロになってしまった」ということ。「ギター・チェロ」などとも呼ばれることもあったという楽器だけに、ギターとチェロの融合を目論んだものらしいが、実際はギターにはあまり寄らず、ほぼチェロ風の楽器にフレットを植えてギターと同じ調弦にしたものになってしまっている。

ギターとチェロ、その違いは単に撥弦楽器と擦弦楽器という点に留まらない。

ギターはボディ表面と弦の間が空いておらず、弦の直下に大型のサウンドホールが空いている。このサウンドホールが弦の鳴りをボディ内に取り込んで響きを生み出す構造になっている。

チェロをはじめとするヴィオール属では、弦と胴の間隔は駒によって大きく空いており、サウンドホールに当たるf字孔は弦の直下ではなく、脇にずれた場所に配置されている。弦の振動はサウンドホール経由ではなく、駒から表板に伝えられ、更にバスバーを経由して裏板に伝えられて、間接的に胴内に伝えられる仕組みになっている。

こういう、2つの楽器の根本的に違う構造に開発者が気付いていなかったのか、気付いていても1つに出来ると安易に考えたのか、そこはわからないが、本来一緒にならない楽器を1つにしようと考えてしまったところが、残念ながらそもそもの敗着だったのではないか、というのが、私の見立てである。

それでも、このアルペジョーネ・ソナタに限らず、シューベルトやその他の作曲家がこの開発途上の楽器のために様々な曲を準備し、中には今でも弾き継がれる作品となったことを確認するには、この録音は良い存在になったのではないかと思う。

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