ビジネスパーソンの自己を啓発し意識を昂揚させることを第一義にするような本をいくつか読んでいくと、自己を変容させかねない新規な知見というのはなくて、当たり前のことだけ書いてある。ではそこに何があるかというとこれらは意思決定者のケアのための道具なのだ。どれもマネジメントやリーダーシップという言葉を基本形にさまざまな流行語がフレーバーとして付与されはするが、そこにあるメッセージはつねに「率いる立場ってつらいよな。でも格好いいよ」という励ましのように読める。
この国の為政はあえてビジネスとして見たとしても、自社都合だけで動いてしまってユーザー目線を欠いたクズプロダクトを産み続けているけれど、こうした愚行を野放しにして駆動しているのは「率いる立場ってつらいぜ」というナルシシズムであるのかもしれない。
現政権を肯定する根拠として「俺たちマネジメント層のつらさ」を重ねてしまっている会社員的な発想があるのかもしれない。でも会社経営と為政とはぜんぜんちがうことだ。会社経営のアナロジーで語るにしてもお粗末な現状であるにせよ、ビジネスのアナロジーで政府を腐すのもけっこう危ないんでないか。