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本日は永井荷風の『濹東綺譚』が連載開始された日(1937年)であり、川端康成の忌日(1972年)でもある。

戦後すぐに久米正雄、川端康成、高見順、中山義秀が立ち上げた出版社「鎌倉文庫」が最初に行おうとしていたのが戦前の名著の復刻で、荷風の『濹東綺譚』も白羽の矢が立っていた。

熱海に居た荷風に出版の許可を貰う為 使者として向かったのが川端康成と中山義秀であり、その時の出来事を両名とも雑誌や随筆に記していたりする。

特に痛快なのは中山の随筆に書かれていたエピソードで、彼は自他共に認める荷風の大ファンであり、会えた事と愛してやまなかった『濹東綺譚』出版を快諾してくれた事で、嬉しさのあまり宿泊先で酒を飲み過ぎて風呂場で寝てしまった。この時、懸命に足を引っ張って「こんな所で寝たら風邪をひいてしまいますよ!」と起こしてくれた川端のことが荷風以上に忘れられなかったという。

大柄な中山を担いで運ぶことも出来ず、かと言って放って置くことも出来なかった川端の必死な姿が何だか可愛らしいお話。

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