杉江松恋さんとの月例SFレビュー番組「これって、SF?」、4月号(3月刊行分)その2です。
私は、日本SF作家クラブ・嵯峨景子編『少女小説とSF』(星海社)を紹介しました。
90~2000年代の少女小説の懐かしい語り口を残しながら、現代的なテーマも意欲的に取り込んだ力作ぞろいです。また、収録作のテーマやモチーフは随所で響き合っており、1冊のアンソロジーとして読み応えがあります。
新井素子、皆川ゆか、ひかわ玲子、若木未生……と続く目次の並びを見ただけで私はうれしくなってしまいましたが、少女小説にあまり馴染みのない方も十分楽しめると思います。
杉江さんが紹介されたのは、坂崎かおる『噓つき姫』(河出書房新社)です。
作者にとって初の単著ですが、とにかく情報の出し入れが上手くて、書き出しから結末そして余韻まで、一篇一篇を流れるように味わうことができます。どう書き出して、誰に何を言わせるか、地の文で何を説明するか(しないか)、どんな結末をつけるか……すべてのバランスが取れていて、さまざまなジャンルの新人賞での実績も宜なるかな。
SF読者のみならず、幅広くおすすめの一冊です。