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清原惟『すべての夜を思いだす』 at ユーロスペース
Yui Kiyohara ‘Remembering Every Night’

素晴らしかったよ。冒頭の「動くモノたち」固定カメラ連打からのジョンのサンのシーンで、俺は勝利を確信したぞ。早苗の視線をモニターへの視線で受ける彼氏のショットとか死にそう。
異和を体現するような兵藤久美さんの演技が面白かった。敢えて(だと思う)抑制的にしていない演技が、それは振る舞いだけじゃなく表情や話し方も含めてだけど、この素晴らしい映像に距離を感じることを促してくれているような気がした。

以下ネタバレ→
「地元の記憶」とリサーチで思い出すのは、たかはしそうた『移動する記憶装置展』。過去に接続したまま歩き回る廣田朋菜は、さしずめ検診員の大場みなみか。
カメラ飯岡幸子、照明秋山恵二郎、音響黄永昌の質の高い仕事をビシビシと感じる。鳥の鳴き声や花火の光線の処理とか、もうバス・ドゥヴォスじゃないか。
丁寧な映像(音も含めて)が随所で冴える。車→電車→人→おばちゃんと、画面の中をゆっくり動くロングの連打、からの、ミュージシャンたちを緩やかに舐める移動長回しのつなぎ。ラストカットの小さい点滅(これはマ ジ で すごい)。知珠が登りながら手を交差させる階段の手すり。→

この映画には家族が出てこない。人間関係は友人と同僚だけ。それ以外のソーシャル関係が出てこないので、どことなくSF的な空気を感じる。知珠に投げかけられる「LINEとかないんですか」の言葉で、この映画に、そういう「バーチャルなもの」が登場しないことに気づく。知珠はスマホをあんなに見てるのに、永遠に彷徨っているし。写真はデジタルデータじゃなくフィルムだし。

3人から離れていった、いなくなった猫、死んだ友人、転居した知り合い。不在の人間関係の網の間で浮かんでいるような彼女たちのリアリティを担保する歩行とダンス。そこに伴走する音とリズム。かっこいい融合だった。

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