絶対一生逃がさない
むむむと真剣にお願い事をしている横顔をちらりと盗み見る。何をそんなに願っているのか。彼女の考えている事は大方お見通しなのだが。チラチラと視線を感じ、勝負だけではない事もお願いしているのか、と淡い期待に胸を躍らす。
長年の片恋が叶い恋人同士になった彼女との関係性はそんなに変わらない。僕としてはもう少し甘い時間を過ごしたいとは思っているのだが。
「あっ去年のお守り持ってくるの忘れちゃった」
「また来年で良いんじゃない? 来年も忘れたらその次でも良いし」
「あっ、うん。そ、そうだね。来年で良いか」
「うん。それで願い事は教えてくれないの?」
「秘密って言ったじゃない! それよりあんたの引いた大吉いい加減見せなさい! どうせ変な事……書いて、ないだと?」
御神籤を結ぶ直前、どうにかして僕の手元を見ようとするナナリーの白いコートが跳ねる。
「結ぶの? 良い事しか書いてないのに」
「うん、一生の問題だからね」
「重。一生って。あっ!一生勝ち続けますように、とか?」
君じゃないんだから、そう突っ込みながらも、まぁ間違ってはいないかな、となるべく高い位置の枝に結ぶ。
御神籤はあくまで気休めと思っている事もあるが、こればかりはどうしても気になってしまうんだ。
『結婚運 待て、将来吉』
来年も一緒に過ごせますように
カラカラッと神社の鈴が鳴る。節分も過ぎて少し遅い初詣にやって来た私達。最近好きな人から恋人になったアルウェスと一緒に巡る境内は、昨晩降り積もった雪のせいか、いつもより静かで、肺を満たす冷たい空気にピンっと背筋が伸びた。寒さで悴みそうな指先は隣の体温で温めさせて貰おう。
「冷たっ」
「隙ありっ。あんたはいつも暖かいわよね」
後ろから両頬を不意打ちで掴めば、びっくりしたようにその手を取られ、そのままコートにイン。ちょっとまだ照れ臭いけど、手を繋げるのがちょっと嬉しかったりして。
「あ、御神籤」
「引く?」
「うん!」
こっちこっちとぐいぐい手を引っ張れば、そんなに急がなくてもお御籤は逃げないよ、なんて甘く笑うもんだから、どきっとしてどんどん心拍数が上がっていく。うぅ、スケコマシめ。
「負けないんだからっ……くっそっ」
「ぷぷっ、中吉? 勝ったね」
私の手元を覗き込んだあいつが、勝ち誇ったように自身の引いたお御籤を見せつけるように掲げた。
「だ、大吉……」
で、でも大吉でも色々あるって言うからひょっとしたら、ハズレ大吉かもしれない。何が書いてあるか見てやろうと覗き込めば、ひょいっと躱される。むむ。
「それよりもさ。ね、さっき何お願いしたの?」
「……秘密」
#1T67SS
甘い疼き
ドキドキ、ドキドキ。隣の席の彼女の身体からふわりと甘いチョコレートの香りが漂う。あぁ、明日はバレンタインか。フェルティーナと友チョコを作るらしい、とサタナース経由で聞いていた事をぼんやりと思い出す。心底嫌われて居るであろう彼女からは、バレンタインにチョコレートを貰えるなんて一生ないだろう。僕にとってはバレンタインデーは、気持ちを伝えてくれる女の子達のお返しを考える日だった。
中学から高校に上がり、バレンタインに貰えるチョコレートの価格も上がってきた所で、ゼノンのように事前に受け取らない旨を事前に告げれば、その日は他の日と同じく普通の一日になったのだが。そうなると一つもチョコレートを貰えない僕にも友チョコと言う形でヘルから貰えるようになり、思わぬ形で彼女から貰えるそれにらしくもなく舞い上がった。だから、それで充分だと思っていたんだ。
珍しくソワソワしたヘルに、いつもと違う物を感じる。あぁ誰かに気持ちを伝えるのだろうか。こんなに近くにいるのに、彼女との距離はとても遠く感じる。じくじくと胸を占めるこの気持ちは甘いだけではない。
相手が誰かなんて考えるだけでも無駄な事を考えて、図書室へと足を向けても心ここにあらず。でも碧眼がこちらを見た気がして。
自惚れが実感に変わるまであと少し。
#1T67SS
どうしようもない恋だから
ぎゅっと握ったチョコレートの包装は、あいつの髪色の金。綺麗に結んだリボンは紅色で…。これが誰宛てなのか言わなくても分かってしまう。
いつ渡そうかと今日一日そわそわしていたが、放課後、漸くチャンスが巡って来た。借りていた本を返す名目でやって来た図書室だが、今日の目的はそれだけじゃない。チラリとあいつがいつも座っている指定席へと視線を向けると一瞬目が合った気がしたがきっと気のせいだろう。
今日渡さなければ意味がないのだ。早く、早く。気だけ焦るのに足が動かない。いつものくだらない馬鹿話や、喧嘩を吹っ掛けるだけなら簡単に出来るのに。
漸くあいつの側にある本棚の影まで近付いた。すぅっと息を吸って目だけ覗かせる。すると学校一美人で性格が良いと評判のあの子があいつにチョコを渡す所だった。
「っ!」
咄嗟に本棚の影に隠れ、しゃがみ込んだ。そしてそのまま逃げるように走り去る。あぁ、私何やってんだろう。周りに励まされて告白しようとしたが、このザマだ。好敵手のあいつが私をそういう対象で見てない事は知っていたのに。
「こんなもの…」箱に詰めた想いと共に捨ててしまおう。
思い切り振り上げた私の手首を誰かがふいに掴む。
「ちょっと待って!ヘル」
何故か珍しく焦った紅が瞳に映っていた。
#1T67SS
学年が上がるにつれて従兄の恋心が周りにバレまくっているんだが
「お前馬鹿なの?」
「馬鹿って言った方が馬鹿なんだからね!」
ドカンと炎と氷をぶつけ合う。捻くれ者の従兄弟の恋は、暗黙の了解だった。
従兄弟の想い人はナナリー・ヘル。珍しい氷型の少女で平民だった。貴族ばかりがいるクラスで萎縮するかと思いきや、隣の席の従兄弟がちょっかいを掛ける為変に浮く事もなく、(無駄に目立ってはいたが)クラスに馴染むのも早かった。
あいつらは馬が合うのか合わないのか、しょっちゅう喧嘩しては髪を燃やしたり、腕を凍らせたり。端から見てもお互いに特別視している事は明白だった。
学年が上がり、互いに呼び名が変わっても二人の関係は変わらず。そうなるとナナリーを敵視する子女達も出てくるが、その辺りの対応は流石にあいつだった。
「おいアルウェス、あまり一人に構い過ぎるなよ」
「はぁ…仕方ないんですよ、殿下。僕は鬱陶しいのを追い払ってるだけなので」
ほとほと迷惑しているんです。そう言う顔は嬉々として、ずっと唯一人を映していた。最初からずっと今日に至るまで。そしてきっとこれからもずっと。
「程々にしておけよ」
「ははっ、で「ようやく見つけたわよ!! ロックマン勝負!!」
「何、馬鹿氷」
うきうきしてる顔、全然隠せてないぞ。
#1T67SS
ロクナナのリアイベ予定の12月のイベントの参加募集開始は2月7日だそうです!
https://twitter.com/akaboo_official/status/1752889619874718126?s=46
感想
@toomi_mnt
あまーい!甘くて最高でした🤭
ハーレのドアが開く度に、ちらちらと気にしてる7ちゃん恋する乙女で可愛すぎますね😆
そして素直な6良い~!
付き合ってからは存分にいちゃついて欲しいですよね😆💕
素敵なお話有り難うございます!
ネタバレ
大好きなシリーズ完結おめでとうございます!!
@toomi_mnt
とうとうこの日が…。7ちゃんじゃないですが、色々思い出してこみ上げる物がありました。😢
けれど、それをよしとしない6(笑)
甘えるように肩に顔を乗せてくるとか可愛すぎます…!あのままだと、去ったアーノルドを想って7ちゃんは感傷に浸って涙を流したかもしれませんもんね…そこに現在6がいてくれて本当に良かったです!同じ顔だからと絆されていたので、ぎゅっと後ろから7ちゃんの体を抱き締める6が、7ちゃんを現在に引き留めるように感じました。
鏡を壊した理由は、あのまま7ちゃんの心にアーノルド自身が残らないように。
現在6これから色々挽回できるように頑張れ!😂
まほうけの沼にはまり、二次小説を書いています。成人済です