もちデイペペってこんな…?その3
そうして、もちペペはもう一度もちデイの額にむちゅっとキスをした。安心して、笑えば、もちもち震えていたもちデイの震えが止まる。主とよく似た紫の瞳が、探るようにもちペペを見つめている。
ああこれは、あのペペロンチーノと言うニンゲンが放っておけなかったのもわかる、ともちペペは思った。金の髪も紫の瞳も、主にそっくりだったからだ。
「大丈夫、私が居るわ」
「もちもち」
「きゃっ!」
すり、と体を寄せた途端、もちデイはごち、と額をぶつけてきた。額同士がぶつかって、もちっと二人はひっくり返る。まだ子どもなのに、とんでもない力だった。驚きに瞬きをしてから、もちペペはもちもちと体を起こす。もちデイはひっくり返ったまま、元に戻れずもちもちしていた。その様子を見て、もちペペは苦笑した。
これはなかなか、大変な子育てになりそうだった。
もちデイペペってこんな…?その2
ともあれ。もちぺぺは、預かった子ども、もちデイと言う名のもちの世話をすることになった。ちなみにもちデイ、というのは便宜上の名前である。もちペペの本名はスカンジナビア・もち・ペペロンチーノであり、もちデイの本名はデイビット・もち・ヴォイドだった。
「こんにちは、デイビット。これからよろしくね」
「もちもち」
もちもちと鳴く子もちに、もちペペは瞳を細めた。仲間と離され、寂しいのかもしれない。本当に小さなもちだ。これくらいのもちは、もう少し仲間のもちと一緒にもちもちしている時期だから。自分の半分しかないもちデイに寄り添い、もちペペは小さな手で金髪を撫でた。もちの腕は短いが、もちデイはもちペペより一回り以上小さいので何とかなる。なでなで、なでなでとしながら、その額にむちゅっとキスをする。
「私はスカンジナビア・もち・ペペロンチーノ。アナタのおねえさん…おにいさん…先輩もちよ。ここの家のオーナーは、アナタと同じデイビットって言うの」
「もちもち」
「いいニンゲンよ。ご飯も美味しいし、安全だわ。優しいヒトなの、誤解されやすいけど…」
「もちもちもち」
「色々教えてあげるわね。よろしく、デイビット」
もちデイペペってこんな…?その1
世話をしてやってくれ、とデイビットに頼まれて、もちペペは小さなもちを預かった。
それはもちペペの半分ほどしかない、金髪のもちだった。まだちゃんと話すこともできず、もちもち、もちもちと泣くくらいしかできいない、本当に生まれたてのもちだ。もちペペもまだ成人しているとは言えないけれど、この金髪のもちは赤ちゃん、いやそこまでではないけれど子どもだった。もちもちの木の根元から連れてこられたのか、ふるふると震えながらもちもちとしている。
どういうことかと主を見れば、ペペロンチーノからの預かりモノなんだ、と言われた。
ペペロンチーノ。
もちペペはそのニンゲンを知っている。主であるニンゲン、デイビット・ゼム・ヴォイドと仲のいいニンゲンだ。よく家に遊びに来て、もちペペにお菓子やフルーツをくれる。時々アクセサリーや洋服をくれたりもする。冬になったときに編んでもらった小さなマフラーは、暖かくて可愛らしかった。
主があのニンゲンに求婚していることを、もちペペは知っていた。あのニンゲンが主の求婚を受けるであろうことも、察していた。もちペペは主が好きだったけれど、所詮はニンゲンだ。ニンゲンはニンゲン同士で番うべきである、もちペペは心得ている。弁えている。感じた胸の痛みは、多分気のせいだ。
ペペさん受が好き。