『カントリー・ミュージックの地殻変動』、大和田さん・細馬さん・永冨さん各々の論考も良い。大和田さんは「アメリカーナ」に見られる混淆性を(個人史的な音楽体験と結びつけながら)辿ったうえで、そうした混淆性をいまのアメリカでシンプルに言祝ぐことはさすがにできないと釘を刺す。細馬さんは本書でも何度か名前が上がるリアノン・ギデンズの仕事を取り上げつつバンジョー史を紐解く。永冨さんはカントリーシーンにおけるクイアの人々の活躍をまとめる(永冨さんのは「普通」をめぐる展開に綱渡り感があるが……)。おもしろい本、なのだが、ほんとはもう一歩さがった「教科書」っぽい一冊が欲しい気もする。