輪島裕介『昭和ブギウギ 笠置シヅ子と服部良一のリズム音曲』(NHK出版新書、2023年)、凄まじい迫力だった。日本の大衆音楽史に新たな視点を持ち込もう(なんならひっくり返そう)という企図と、ユーモアもまじえた語り口で一気に読まされる。録音ではなく実演に重きをおくという基本的なスタンスは、「録音物としてのポップ」に軸足を置いている身からすると刺激的であると同時に耳が痛い話でもあるが。末尾に語られる"本当は「芸人」と「音楽家」という区別自体を撤廃したいと考えている"(p.275)というささやかながらラディカルな提案に触発される人は少なくないのでは? 来年の朝ドラの予習にもぜひ。

洋楽受容史としての日本大衆音楽史からの脱却というコンセプトも、『リズムから考えるJ-POP史』を書くときにもやもやしていたところにすぽっと入る感じがある。新書なので読みやすいしおすすめ。

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芸人と音楽家の区別を撤廃するということは、実は「芸人がバンドをやる/ラップをする」みたいな現象を再考するときに重要かもしれない。ゲートキーピングでもなく、単純にそうした現象に寛容になるわけでもなく、録音物に固定されない幅広い「芸能」の文脈を語ること。

芸人がバンドする/ラップする企画の欺瞞をときほぐすときに必要な視点、というかね。

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