(メモ)米国。主人公のトランス女性(著者)がホルモンセラピーを受ける許可を得るために、セラピストを訪れる。すると予期せずして解離性同一性障害の可能性が浮上し、ホルモンセラピーの許可がおりない。主人公は許可をもらうために、セラピストとのセッションを通して過去を思い出し、コア人格を見つけようとする。
主人公の中には3つの人格(エマ/カティナ/エドガー)が共存し、全員が医学的なトランジションを開始したいと強く願っている。セラピストはサポートしようとするが、コミュニケーションがうまくいかず焦ったい。わたしは全人格に共感して胃が痛くなった。
主人公それぞれといっしょにセラピーを受けるような感覚で読める章と、セラピストの視点で主人公を見ている感覚で読める章があるが、舞台がほぼずっとセラピストの部屋なので閉塞感がすごい。苦しい。虐待の描写も多いので読むときは注意が必要。読み切ってしばし放心状態だった(ラストは明るい)。
自伝だが、著者は思いつくまま走り書きした絵をパズルのように合わせ、切り貼りする中で、当時何があったのかを理解していったらしい。
大胆な描線のイラスト。表情豊かで余白の使い方すごい。
参考文献に『マッドハニー』共著者ボイランの自伝、また賛辞に『デトランジション、ベイビー』のトーリ・ピーターズ。