エメトセルクが現生人への肯定と否定の間を激しく揺れ動くのは、一つにはヒカセンが彼と因縁浅からぬ古代人の魂を有しているからなのだろうけれど、もう一つには、彼がやはり「仲間」を、隣人と思うに足るだけの「他者」を渇望しているからなのだろう、と思う。
彼は仲間が欲しい。「古代人」である他者が欲しい。けれど愛すべき仲間達の命によって贖われた世界は醜く、不完全で、そこにはびこるのは古代人と似ても似つかぬ歪な人間ばかり。
彼はきっとそうした人間と触れ合って、仲間になれやしないかと試みてきた。そしてその度に「やっぱり違う」と失望した。そのことを延々と繰り返してきたのだろう。
彼の思う「命と思えるだけの命」「生きていると言えるだけの生」は失われて久しく、この世のどこにも見出せない。彼は故郷喪失者で、いわばディアスポラを経験している。