本好きの下剋上32巻グレーティアの話。 

エピローグで明確に書かれたグレーティアの過去を考えていた。
愛妾は建前上は妻や娘の側仕えとしてその家に置かれていて、実際は男の伽をするということだよね。平安時代で言う召人(お手付き女房)にかなり近い感じだな〜という印象。

これを読んで思ったのは、つまりフリーダもこういう立場なんだ、ってことだった。勿論フリーダを買うであろうヘンリックはシドニウスに比べれば人間的にまともな人だろうと思われるので、もうちょい真っ当な扱いをされる可能性は高いけれど、それだって身食いという身分を思えばどうなるか分からない。
フリーダがグレーティアみたいな目に遭う可能性はゼロじゃない、よね。(続)

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→で、そこから更に思ったのは、第一部末〜第二部の神官長がマインを哀れに思ったのは、そういう未来を生きる可能性が高いからだったのかな、ということ。
実際、神官長がマインに教養を身につけさせた理由は、貴族の愛妾になったとしても少しでもまともな待遇を得られるように……という思いがあったからだよね。
だとすると、神官長の目に見えていたマインの未来は、魔力が膨れて死ぬか、貴族の愛妾としてグレーティアと同じかそれ以下の生活をして生きていくか、だったのだろう。マインは身食いだし、平民としても貧しい生い立ちなのだから、主人の性格がアレなら、当然グレーティアより酷い扱いをされる可能性は高い。

最初はユストクスにマインを愛妾にどうか、と言ったのは、せめても人間的にまともな主人を持たせるのが良いのではないかと思ったからだろうと想像すると、さもありなんだよね。

グレーティアを通して、フェルディナンドがマインの中に見ていたものが何なのかが少し見えてきたような気がしたし、フェルディナンドがあの身分では珍しくしっかりと認識している社会の暗部がどのようなものなのか、それが彼の生い立ちと紐付いた形で見えてくるような気がした。

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本好きの下剋上32巻グレーティアの話。 

グレーティアもフェルディナンドも、全く自分の生い立ちを肯定していないけれど、しかしその痛みに耐えて必死で生き延びたことで、彼女なり、彼なりの視野の獲得があって、それがあるから彼女自身、彼自身になっているのだよな、というのは強く強く思う。

フェルディナンドは自分がそのような生い立ちであるからこそ、マインに同情して、助けてやろうと思ったのだろうし、孤児院を何とかしたいというマインに共鳴することもできたのだろう。決してそういう「有用性」のために彼の過去を肯定したい訳ではないけれど、彼が自らの生まれ育った環境や状況を痛みと共に咀嚼したから、彼はマインと心を通わせることができたのだよなあ、ということを思う。

グレーティアもそうなら良いなと思うんだよね。そういう日がいつか来て欲しい。別に結婚とかそういう形じゃなくて全然良いけれど、辛い経験が誰かを助けたり、支えたりする勇気や優しさの源泉になって、そのことによって彼女自身が救われるような、そういう経験をこれからできたら良いよね、と強く思う。

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