アーシュラ・K・ル=グウィン著清水真砂子訳『こわれた腕環』の最後の方で、ゲドがテナーに、「それでは、まるで、ひょいと見つけて、ぽいと捨てる物じゃないか。わたしはそんなことはしない」と言うんだけれど、これをマインちゃんがフェルディナンドさんに言ったらとても良いだろうな〜みたいなことを思った。
フェルディナンドは「私が要らなくなったら捨ててくれ」とか言いかねない人な訳だけれど、それを聞いたマインは「捨てられる訳ないでしょう!? 貴方は物じゃないんですよ!」って言いそうだよねって思ったという話です。
「それとも、フェルディナンドはわたくしが不要になったら物みたいにぽいっと捨ててしまえるのですか?」
「は?私が君を不要に思うなどあり得ない。今話しているのは逆のことだ」
「わたくしをそれだけ大切に思って下さるのに、どうしてわたくしが貴方を同じように大切にしていると分からないのですか!フェルディナンド様のバカバカ!」
31巻の感想か何かに書いたんだけど、ローゼマインがディートリンデやアルステーデに対して激怒するの、フェルディナンドは全然共感できていないというか、ローゼマインが何にそこまで怒っているのかを余り分かっていない感じがあるよなあ、と思っている。
彼にとってマインは唯一無二の特別な存在だけれど、それはどうも彼の中で完結しているなあ、と。自分がマインに愛されている感触はあるとしても、自分がマインを思うようにマインも自分を思っている、とは多分感じていなくて、マインは自分じゃなくても良いのに自分を選んでくれたとか、何かそういう風に思っているだろうなあと……。
フェルディナンドがマインを捨てられないように、マインだってフェルディナンドのことを捨てられやしないのに、彼は今一つそこの相互性みたいなものに気付いてなさそうで、それは多分彼が自分自身の価値を低く見ているからな訳だけれど、その自尊感情の低さはマインちゃんを傷付けるからね……貴方は物じゃないからね……っていうのをね……いや今更なんですけどね……思いましたという。
起きてから、いやあれは愛されて当然ムーブではないな……と思っ た。不安だから引き留めてるんだろうな……と。