VHSデッキは今も持っているが繋げられるモニターがない。若い頃、オタクに憧れてDVD化されていない80年代のB級ホラーを中古屋でちまちま集めていた時期もあったが一昨年の引越しの際ほとんど捨てた。廃墟となった父親のアトリエの屋根裏部屋には大量の録画VHSも眠っているがとっくにカビてどうにもならない。気取ってラベルには「映画」の2文字とナンバリングだけを書き、ノートかなにかで録画内容を管理していたマメなのか痛いのかよくわからない記憶がある。基本は3倍録画なのでうまくすれば1カセットに3〜4本映画が入った。深夜の地上波はいろいろな映画を昔はさらっと流していて、高校時代はとりあえずなんでも録って土日に観た。そう言えば「ポーラX」や「海を見る」なども地上波で観た。当時の衝撃はかなりのもので、4トラックのカセットMTRでノイズっぽい何かを作り始めたきっかけの一つは恐らく「ポーラX」だった。ネットも名画座もまともな本屋もなく、体系も口コミも映画好きの友達も皆無な中で、新聞のラテ欄に名前があるから何も知らないけれどひとまず観る、というような営みからは今、随分遠ざかった生き方をしているな、と少し思った。