遠い昔、遥か彼方の浪人時代、「不特定音源多重反復装置: サウンド・リピート・キャリアー」という大仰なネーミングの作品を作った事がある。おもちゃの掃除機の吸い込み口にマイクを仕込み、中身をくり抜いたボディにデジタル・ディレイのエフェクターとミニアンプを組み込んだこのローテク・マシンを担いで街に繰り出し、吸い込んだ路上のあらゆる音を反復・多層化させながら持ち歩く、パフォーマンスも込みでの作品である。1号機の完成をもってこのプロジェクトは停止したが、今振り返ればサンプラー等と合体させてフィールド・レコーディングと作曲・演奏を並走的に行う楽器方面への展開など、いろいろとその後の発展もあり得たのでは?とも思う。ところで当マシンのプレゼンをある気難しい大人達の前で行った時、ひと通りの作品説明をし終えた後、1人の面接官に「街の音を録音して楽しみたいのなら、この世には『ICレコーダー』という便利な機械があるよ?」と謎の慈愛に満ちた目で言われ、余りの概要の伝わっていなさ加減に愕然としたが、「お互い理解し合えるのはほとんど『点』なんだよ」って寄生獣のミギーも言っていたので言葉を尽くしてやっていくしかない。