9月中旬、豊岡演劇祭2022に参加した。参加団体である屋根裏ハイツの「ナイト・オン・アース(remix)」という作品に、タクシーの運転手役で出演したのだ。屋根裏ハイツは「小声」が特徴と言われる劇団で、音楽で言えば「ディストーションペダルを踏まないハードコアバンド」のような事だろうか。本作は、深夜に呼び出し食らってタクシー停めたら運転手の妙な回想が始まり聞いてるうちにその回想の時間軸の乗客が実際に乗り込んできて...という少しSFめいたお話で、素舞台に立つ運転手の「語り」が顕現して現実にもつれ込んでくる構造など、演劇特有の仕掛けに満ちており、自分のやりたい事とも近接していて刺激になった。2ヶ月ほどの稽古期間を経て、1週間弱の現地滞在、そしてわずか2回の上演。演劇をひとつ立ち上げるのには時間も手間も信じられない程かかる。屋根裏ハイツの稽古は理知的な時間の積み重ねで出来ていて、この丁寧で実直な頑張りの累積が小声演劇の強度の源なのだなと振り返って思う。クリーントーン・ハードコアは伊達じゃないのだ。そんな彼らの新作「父の死と夜ノ森」がSTスポットにて1/19-22に上演されるので全員で行こうな。