十角館の殺人の感想(原作トリックにも言及しています)と実写化、もしくはメディアミックスについて。実写版のネタバレ、原作も含みます 

芦原妃奈子先生がドラマ脚本を書かれた経緯説明の際、綾辻行人先生は自分は気にしないという話をしていてジャンル的※にそうだろうなというのと、綾辻先生の場合原作通りは無理でしょうと思った。
ところがこの「十角館の殺人」はほぼ9割原作通りといういう恐ろしい代物だった。
文字情報しかない読者に「AとBは別人」と思いこませることが最大のトリックなので、視覚情報にするならどうしたって変更するしかない。ところがこれを原作通りやった。
ヘンな小細工無でヘアメイクと配役でやってのけたんですよ。
メガネ外したら別人、髪形変えたら別人を実写でやった。
実際指名手配犯が同じことして逃げおおせた例はたくさんあるので、あの役者さんのファンでない限り気づかなかった人も多いのではないかと。
照明とか角度も工夫して真犯人が映るシーンも存在感が埋没してしまうようになっている。
そして、狂言回し役である江良リイに『望月歩』。だれだよ決めたの、天才かこの配役。原作でもエラリイは煙幕であり狂言回しでよくも悪くも読者、視聴者の注意をひく存在。→

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十角館の殺人の感想(原作トリックにも言及しています)と実写化、もしくはメディアミックスについて。実写版のネタバレ、原作も含みます 

大仰な台詞、鼻につく態度、文章で読んでもありえない漫画チックな人間をそういう人間に落とし込んでちゃんと視聴者の注意をひいているんですよね、つまり原作通りの役割を担っている。
監督が長年やりたかったという言葉は嘘ではなくマジなんだろうなと思うほどの原作尊重。改変したのは江南さんところの大家さんとのコミカルなやりとり。これはおそらく1986年代の空気感を強調させるためかなと思いますが少なくとも原作設定の邪魔にはなってなかったかなと思います。

映像化するにあたって原作を素材化している作品のあまりの多さにうんざりしたり、ミステリーファンだから皆このトリック知ってるだろうから地上波で犯人側から見たクリスティーをやるという相当無神経なことを愛でやった人もいるので。
有名ミステリーのトリックをここまで大事に扱った映像化って珍しい気さえする。

十角館の殺人の感想(原作トリックにも言及しています)と実写化、もしくはメディアミックスについて。実写版のネタバレ、原作も含みます 

この犯罪の動機なのですが、読んだ当時もちょっと弱くないかと思いました。かなり理不尽。
皆が無理やりに千織にのませたということは考えにくいし、読者が何人かの記憶を見る限りでもそう言った事実はない。三次会に誘ったこと自体が悪といっても、今までだって断っていたのだから本人にその意志があれば断ったはずだ。
事故として忘れ去った仲間たちが許せないといってもオルツィが苦しんでいたのは犯人だって知っていたのにその場にいただけで絞殺。
ドラマ版はそこを深堀していて犯人の思い込み(わざと助けなかったんだ、ミステリー研究会だから悲劇の始まりに興奮していたんだろう)や千織がどうして参加したのか(原作のオルツィの回想みるとあり得るかもと思えるんですよね)つまり犯人の理不尽さ身勝手さを、ちゃんと描いている、この作品に対する感想や尊敬が現れている改変つけたしと思いました。よかった。

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