実は読む機会がなかった『BANANA FISH』を読んだ。
すごかった…めちゃくちゃ面白かったです。
作中の人間関係が単純に敵と味方じゃないのが良かった。絶対的な信頼関係がある親友が共同体のしがらみに縛られて思うように動けなかったり、敵対勢力の構成員が個人として感情を動かされて助けになってくれたり、複雑な要素が絡み合って話が進む。
パパ・ディノ、月龍、ブランカはとくに複雑で、そこが魅力でもあった。そういえばこの3人はアッシュへの執着がとくに強かった。
文庫版で読んだんだけど、どこかの巻の解説に、最初はリアルな劇画だったアッシュの作画が途中から少女漫画になるみたいなことが書かれていて、最終巻と1巻を比べてみたらほんとに絵がぜんぜん違ってびっくりした。描線からして違う。どこで変わったのか、読んでいるあいだは夢中でまったく気づかなかった。月龍が登場するあたりから線が細くなってくるかも?
描き込まれているワールド・トレード・センタービルを見るたびに「ああ…」と思った。
それにしてもこんなスケールの物語を、よく緊張感を保ったまま終わらせたなと感心してしまう。もちろん作者の力量によるところが大きいけど、「時代」もあるだろうと思う。これは2020年代の、ピザゲート陰謀論が跋扈する今は作れない話なのではないか。