武田砂鉄『偉い人ほどすぐ逃げる』(文藝春秋、2021年)
「毎日新聞の地方版でも、福岡県福岡市の中学校で「生徒や教員ら約210人が人の嫌がる作業を通じて心を磨こうとトイレの大掃除をした」(2018年1月28日)とある。全ての記事で、その見出しに「心」「磨く」とある。とにかく、トイレを磨けば、心も磨けると書く。ほんの少し調べれば、このトイレ磨きのムーブメントを誰が起こそうとしているのか、どういった考えに基づいているのかが分かる。新聞記者の皆様は、トイレを磨けば心も磨ける、というタイトルに打ち出した原稿を、もう少し疑って磨きあげようとは思わなかったのだろうか。」(91頁)