親切な編集者の人にもらった『ここにある社会主義』、ドレーパーとかを引いているのだけれど、『経済学教科書』以来綿々と受け継がれている展開がところどころ顔を出していて、読んでると混迷する。例えば――
「単純商品生産が拡大した結果、労働する能力すなわち労働力も売買の対象となり、資本家が労働者を雇う生産形態が一般化して、資本主義社会は確立しました。労働力商品の価格が賃金です」(50ページ)
あらら、労働力商品の誕生が、「単純商品生産の拡大」の延長で語られている……
ちなみに、「社会主義」を語りながらも、労働力商品が出てくるのはこの1箇所のみ。「価値法則」とかも出てこない。
他方で、「ナウい」(死語)展開もある。
「社会主義の本義は、人々が自己実現できるように社交しコミュニケートできる社会を追求することでした」(112ページ)
いや、ちょっと、これは、どうなん??
『ドイツ・イデオロギー』の「朝には狩りをし、午すぎには魚をとり、夕には家畜を飼い、食後には批判をする可能性」(大月版ME全集、第3巻、29ページ)が、、「自己実現」の話だと思われている可能性