フックス『風俗の歴史』第九巻(安田徳太郎訳、角川文庫版、1972年)
「絵画が、言葉とくらべて、精神におよぼすひじょうに集中的な作用は、絵画を、とうとう、現代のいちばん重要な広告手段にまで、持ちあげてしまった。ところが、もし絵画的手段が大衆の目をむりやりにひくなら、絵入り広告は、いつでも、いちばん徹底的に作用するから、業者は、大胆にも、好んでエロチックな趣向に訴えた。というのは、性的なものはすべて、いつでも、人間の目をむりやりにひきつけるからである。それは、ひじょうに多くの人を、突きはなすが、どんなばあいでも、ほかの絵画にくらべて、うんとたくさんの関心をとらえる。したがって、「なにかあるものが、いつでもひっぱる」という言葉が、これにぴったりあてはまる。そして、昔から、エロチークとのこういう抱合わせによって、じつにたくさんのものが推薦された。」(238頁)
「つまり、そういう広告によって商売が繁盛して、利潤率が高まるなら、業者は道徳などを屁とも思わなくなってしまう。そして、もしこういう広告があまりにも多くなったために、利潤率が下がるなら、業者は、新しいトリックが、新しい利潤のチャンスを、たとえ保証しなくても、約束するまで、さっそく、美徳の道に立ちかえる。なぜなら、この世の中には、ひとりの神と、ひとりの法則、つまり商業と、できるだけポロいもうけがあるだけであるからである。」(前掲書、242頁)
フックスは陳腐化まで書いていた。