フロリダ州会議事堂の前で演説する、悪魔の角をつけた怪しい人物。
「サタン万歳! 州知事ありがとう!」
彼は悪魔を崇拝する宗教団体〈サタニック・テンプル〉の信者。公立学校での祈祷行為を認めた州知事を「なら悪魔崇拝の祈祷もできますね」と、讃えに来たのだと言う。
これはおふざけ? それとも危険なカルト集団?
2013年に始まった〈サタニック・テンプル〉の活動は米国各地に広がっていく。反同性愛を掲げる教会への抗議、中絶の権利、信教の自由の主張……あれっ、全然まともな行動ばかり。
そう、彼らは「悪魔崇拝」という形で米国政治を侵食するキリスト教ナショナリズムに抗い、合法的かつ挑戦的に政教分離と自由・平等を訴えていくのだ。
中心となるのは、オクラホマ州から始まった「バフォメット像」設置をめぐる攻防。政教分離の原則に反して「十戒」の記念碑が州会議事堂の敷地内に建てられたため、それに対抗する形で「悪魔崇拝のシンボルも」と建立を申請。当然、保守派は反発。さて、この戦いはどうなるのか……?
彼らが問いかける米国の諸問題は、自民党と旧統一教会、宗教右派の関係が取り沙汰される日本でも決して他人事ではない。刺激的な一作。
『Hail Satan?』(2019)9日まで。
https://mubi.com/films/hail-satan
藁人形作家