アルヴィン・グリーンバーグ「ホルヘ・ルイス・ボルヘスによる『フランツ・カフカ』」(ナイトランド・クォータリー vol.24/垂野創一郎訳)読んだ。
ボルヘスが残した読めない文字で記された一編の物語。インディオのある部族の方言で記されたというその記事のコピーは、好事家の間で複写され増殖していく。
そして、そのなかに見られるあるシンボルが、全世界に、誰にも気づかれることなく浸透していく。そしてとうとう、フランツ・カフカ「変身」冒頭に登場する「虫」の概念をも上書きしてしまう……。
フィクションが現実を塗り替える逆説性、そして「カフカとその先駆者たち」の顕現とも言える世界の変容。素晴らしいボルヘストリビュート短編。これは読まれるべき。
鯨井久志。翻訳・書評・ときどき精神科医。SFとラテンアメリカ文学とお笑いが好き。サークル「カモガワ編集室」主宰。ジョン・スラデック『チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク』(竹書房文庫)好評発売中。 Hisashi Kujirai /translator, reviewer