「さまざまな異常の中でも、現代の社会がことに大きな関心と不安を向けているのは「精神の異常」に対してである。「精神の異常」は、けっしてある個人ひとりの中での、その人ひとりにとっての異常としては出現しない。それはつねに、その人と他の人びととの間の関係の異常として、つまり社会的対人関係の異常として現れてくる。」
木村敏『異常の構造』講談社学術文庫、2022年、17頁
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エトセトラvol.8のジュディス・バトラーさんと清水晶子さんの対談を読んだ。最初に出てくる読後の感覚は「安堵」。自分が理解し信じようとしてきたフェミニズムの思想と運動がもつ内省と解放の力を再確認することができた。
インクルージョンは既存の枠組みの中に排除されてきた人を入れるというだけの付け加え作業ではなく、排除に支えられた枠組みと構造そのものの変化を求めることであり、組織の目的や優先順位が変わることで排除されてきた人がその組織に加わる必要性が高まるという点も深く頷く。既存のスポーツの枠組みにトランスを(トランスにとって)暴力的でない形で包摂することはかなり難しい。変えられるべきなのはトランスの身体やホルモンレベルではなく、今のスポーツのあり方、目的や優先順位、使われ方の方なのだと思う。そこで利益や地位を得ている圧倒的多数のスポーツ関係者は反対するだろうけど。
ベルリンのミッテ区に設置された平和の少女像について、追加で2年間の設置延長が確定した模様。
このミッテ区の少女像は、2020年から1年限りの設置予定で建立されたものだが、建立直後から日本政府を含む日本右翼から「像を撤去しろ」との常軌を逸した恫喝や嫌がらせが現地議会に対して相次いだために、皮肉にも現地では逆にこの像の必要性が強く認知され、日本右翼の思いとは裏腹に、1年限りどころか永久保存の方針が議決され今に至っている。
像が建立された直後には、現地議会でも日本との関係を考慮し、像に付属する碑文の文言を日本軍慰安所問題に限定せず広く戦時性暴力一般をカバーするような内容に変えたらどうかとの提案が出たこともあったが、上述の日本右翼の奇行が酷かったために、「(この問題は)戦時性暴力一般の問題に留まらない」との理由で拒否されたと言われている。
岸田自民党政権は、引き続き撤去に向けて現地に働きかける方向のようだが、戦時性暴力に関するメモリアルを撤去しろと言って恫喝かます行為が、よその国からどのように見られるかをまず検討したほうがよい。
アーティスト | 身体の抵抗、身体の回復。