KADOKAWAに限らず大手出版社はなんらかのかたちでヘイト本を出している、というのはたしかですね。今回のはタイトルがあまりにもわかりやすいものなのにくわえ、宣伝の仕方も露骨だったので目立ってますが、よく見てないとわからない、あるいは中身を読まないとわからないものはたくさん出ているはずです。たとえば文藝春秋や新潮社、中央公論新社あたりは、新書や文庫のレーベルで定期的に怪しげなものを出しています(愛国系が多いかな)。暇空茜とNHKのアレではないですが、企業規模が大きくなればなるほどその中にいる意図的な差別をおこなう者の絶対数も増えますから、大手=安心というのは幻想でしかないと思います。

差別が悪意の有無に関係なく生じるものである以上、ヘイト本を「出さない」出版社は原理的に存在し得ないので、あくまでも「出さない(ように気をつけている)」ことしかできないとも言えますね。本屋も同様。どれほど反差別を掲げていようとも、差別に直接加担することはある。なので、あまり「出していない」「置かない」「差別をしない」などの形容はしないようにしています。それをつけることで、もうなにかを成し遂げた気になってしまうこともありますし。

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今回個人的に衝撃だったのは、KADOKAWAというある程度経営が安定してそうな企業が、わざわざ露骨なヘイト本を露骨な宣伝文句で売りに出す、というリスク/コストを取ってまで売ろうとしてきた、ということのほうだったりします。映像やグッズなどのコンテンツ事業で比較的安定した収益を得ているように思えていたので、わざわざそんなことする?という衝撃。ここから考えられるのは大きくわけてふたつ。本当は経営がヤバい。もうひとつは、経営云々とは無関係の翻訳チーム単体の暴走。たぶん後者。そしてKADOKAWAレベルの規模になると刊行する本の1点1点など確認していないので、経営陣レベルの中にもまだこの本の存在を知らない者もいるくらいだと思う。

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