さっきの話に追記すると、本屋同様に版元の人間もなにもわかってないです。たとえば最近出たナンシー・フレイザーの邦訳本の解説に、トランス排除言説を垂れ流してた白井聡を担当させちゃうくらいには、なにもわかってないわけです。筑摩書房の、ナンシー・フレイザーの本を邦訳して出そうと思うくらいの編集者が、このレベルなんです。経済の本、というだけで白井聡が抜擢されてしまう。権威主義的だし、いかに世間を追っていないかのあらわれでもある。原著者がこれを知ったらどう思うんだろうか。

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でもここで言う「世間」というのは「トランス差別に対してまっとうな意識を持っている」という、残念ながら非常に狭い世間なので、ほとんどの人間は、そしてむしろ人文科学にある程度関心のある本屋ほど、白井聡の名前でその本を信用してしまうことになる。

しかし、常日頃から本の仕入れを自発的にしている人間であれば、白井聡が危うい方向に行っていることは、SNSを見ていなくても察知できたりする。たとえば最近の新刊(リンク先)はビジネス社という版元から出ているが、この版元から出ている本はおおむね「ネトウヨ好み」のものである。そのことを知っている本屋なら「なぜここから出すの?」という疑問が自然と生じる。しかし配本頼みで新刊のチェックをしていない本屋は気づけない。そのうえ雨宮処凛との共著であることもあいまって、なおさら重要な新刊だと思ってしまう。タイトルも一見すると反現政権っぽいので騙される。

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ちなみにビジネス社の最近のラインナップはこんな感じ。『中国経済崩壊宣言!』『教科書に書けないグローバリストに抗したヒトラーの真実』『お帰りやす、天皇陛下』などなど。なお、『向かい風に進む力を借りなさい』の著者は武田鉄矢。

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このようにデータベース的なものをおのれのなかに蓄積していれば、どの版元から本を出すのかというチェック項目からその著者の思想傾向が推測できる。

余談だけど、ヘイト本で名を馳せた(?)青林堂は最近スピリチュアル系しか出していない。ヘイト本が売れなくなってきているのを敏感に感じ取ったのだろう。完璧な路線変更である。というように、版元内部の動きは刊行される本から推測できる。当然の話ではあるけども。しかしこういうことをできる本屋、編集者などは少ない。

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さらに余談だけど、ゆえにデータベースを持つ本屋は編集者の転職(版元間の移動)に気づくことができる。この人こういう本よく作るよね、というのが蓄積されているので、その人がいた版元からその手の本が出なくなり、別の版元でその手の本が刊行されるようになると、なるほど転職ねー、となる。

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