「農耕以来、ホモ・サピエンスは栽培植物と飼育動物の知識を第一とし、それ以外の周囲の生命をすべて害虫獣と雑草として区分した。有用かどうかを基準にする世界観は、人の評価にも拡張され、人を有用か無用かで分類するようになった。こうして、ホモ・サピエンスは「現代人」となり、みずからの回りの世界を単一の心の色に染めはじめたのである。それは、「現代人」の魂を痩せ細らせる道だった。このやせ細った魂たちが、現代人の社会構造の特徴である階級社会を形成し、「文明化」を起こした。そこでは、支配と被支配を永続化しようとする悪辣なたくらみが日常となり、富の蓄積とその配分の不公平、富の防衛のための戦争と憎悪の拡大が毎日の仕事となり、現代人たちのお互いの関係は悪意に満ちたものになった。」(島泰三『ヒト 異端のサルの1億年』中公新書2016年)