「だが、その終末はまさに決定的である故に、後の空白はどのようにも塡められるはずだ、どのようにも塡められねばならぬという、気がかりに満ちた強迫観念に似た思いを、営みの無効を告げられてもやはり生きて行くよりほかない人間の心から誘いだす。それはベンヤミンが、ゲオルゲの詩の印象と分かちがたく結びついているという、自殺した女友達の謎めいた身ぶりに通じるので、彼女の死によって永遠に解けぬままに終わったその謎が、まさしく解かれ得ぬ故に、解きたいと願う気持ちをいつまでも抱き続けさせるのと同じことなのである。」(川村二郎『アレゴリーの織物』講談社文芸文庫2012年,pp350-51)